罪人(ツミビト)
始業のベルが鳴った・・・
その日のルミは昨夜の夜更かしが祟り、この時とばかりに机を枕に眠っていた。
・・・背中で誰か呼ぶ声がする。
「ちょっとー、ルミー、起きなさいよー。」
ルミは寝ぼけ眼で後ろの席の聡子を見た。
「う・・・うん・・・いいのよ・・・。」
「いいワケないじゃないのー、授業が始まるよー。夜中なにやってんのかは分かんないけどさー、 1時間目のシスターには気をつけなくちゃだわー。」 「わ・・・分かってる、分かってるわよ・・・。」 ルミは恨めしそうにそう言うと、1時間目の厚い歴史の教科書を机の中から取り出し、 それを枕にして、また眠りにおちてしまった。 ・・・背中で誰か呼ぶ声がする。 「ルミ、起きなさい・・・。」 目が覚めると、ルミは大根を枕に眠っていたらしい。 ルミは、大根畑にいた。知らないうちに大根畑で眠ってしまったらしい。 とにかく今、ルミは大根畑の中にいた。 「う、うん・・・いいのよ・・・。」 顔を上げると、そこには煤けた顔の聡子がいた。 「ルミ、何をしていらっしゃるの?この非常時に・・・。」 モンペ姿で手に大根を持っている聡子の姿に、おもわずルミは吹き出した。 「ちょっと聡子、なに?そのスタイル・・・プッ。」 「あなたこそなんですか?そんな姿で、よく勤労奉仕ができたものね。」 「なに言ってんのよ、勤労奉仕?ボランティアの事でしょ?何かしこまっちゃってるのよ?」 「お黙りなさい!前線で戦ってる兵隊さんに申し訳ないと思わないの?」 ルミは我慢できずに立ち上がった。 「ナンセンスだわ!みんな、どう思う・・・?」 しかし、廻りのクラスメートもみんなモンペに手ぬぐい姿だった。そして、ルミに冷たい視線を送った。 ルミは頭が痛くなった。 (そうよ。今は米英と戦争中じゃないの。でも・・・なぜ私だけこんな姿?) クラスメートたちが毛色の違う姿のルミに罵声を浴びせる。まるで罪人であるかのように。 「敵国語を使った!」 「非国民!」 「売国奴!」 「xxxx!(放送禁止)」 どこから取り出したのか、彼女たちは竹槍を持ち、その矛先をルミに向けた。 今、ルミは「罪人」となった。 その時、どこからともなく叫び声がした。 「敵機来襲ーー!!」 「伏せてっ!」 「キャーー!!!」 轟音とともに黒い物体がルミたちの頭にのしかかってきた。B15か29か分からないが、 機銃が大地にめり込んだ。彼女たちの悲鳴が聞こえる・・・。 わけのわからぬまま、ルミはその場に倒れこんだ。 続く