気が付くとルミは、畳の上で眠っていた。いや、畳と言うよりむしろ、ムシロの上だった。
感触がチクチク痛い。これが針のムシロ・・・と思った。ルミはムシロの上で寝てしまったらしい。
「面を上げイ」
ルミが顔を上げると、そこにはちょんまげ頭の男たちが並んでいる。時代劇に出てくる奉行所のようだ。
するとここは、おシラスの上・・・?とっさにルミは思った。そう思う事しかできなかった。
「ええい、そなたはまだ信仰を捨てぬと申すか?」
「え?」
「異国の信仰など捨てイ、と申しておるのじゃ。」
たしかにこの時代は鎖国の時代。しかしルミの胸にはロザリオが輝いていた。教えをおいそれと
捨てるわけにはいかなかった。
「いやです!」
後ろの役人らしき侍が鞭を振り上げた。ルミは咄嗟にこう言い放った。
「そうだ!金さん!金さんなら知ってるはずです。」
しかし金さんは、いなかった。
「血迷うたか?この者を磔・獄門にせい!!」
ルミはあまりの突然の死の宣告に、うろたえた。この中でルミは罪人だった。
「ああ、この世に神も仏も無いの・・・?」
目を閉じた瞬間、廻りからどよめきが起こった。ルミが声のする方を見ると、
海の向こうから艦隊がやって来た。
「黒船だあ!」
ルミは慌てふためく群衆の中にもまれて、意識が遠のいていった。
気が付くとルミは大衆の面前にいた。知らぬ間に大衆の面前で眠ってしまったらしい。
しかし大衆はルミを憎しみの目で見ている。ルミは両手を掴まれてひときわ高い台の上にいた。
一人のリーダーらしき男がフランス語で話している。ルミはなぜか、フランス語を理解できた。
「今、貴方の命は我々民衆の手に委ねられた。言い遺す事はありませんか?」
ルミはそのリーダーに尋ねた。もちろんフランス語だった。
「どうしてです?あたくしが、一体何をしたというのですか?」
「国民に膨大な血税を科して、そのバッグを買ったのではありませんか?」
たしかにルミはお気に入りのブランド物のパリコレのバッグを持っていた。パパからのプレゼントだと
思っていたのに、パリ市民の税金を無駄遣いしてたのか・・・。この中でルミは罪人だった。
「いやだ、あんまりだ、もっとマトモな裁判してくださらない?」
ルミの首は、ギロチン台の上に載せられた。黒く輝く大きな物体が落下してくる。
思わず目を閉じたルミは、こう叫んだ。
「これは・・・夢・・・これは・・・ゆめ・・・」
目の前には、怒りの表情のシスターが立っていた。
今、ルミは説教された後、罰として、礼拝堂の掃除をしていた。
ルミは罪人だった。でもその表情は明るく、思わず鼻歌も出てきてしまっていた。
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