撹乱
「で、『作戦X』は何時決行・・・?」
「うむ、三日後だ。」
とあるホテルの密室で、その初老の男と米倉は密談をしていた。
「米倉君、これは重要機密だ。ライバル社のスパイが盗聴しているかもしれん。」 「大丈夫です。ここは我々一部の者しか知らない秘密の部屋です。そう簡単に盗聴などできませんよ。ははは」 しかし、その話は盗聴されていた。ホテルのボーイとメイドの姿のスパイだった。 「フフフ・・・あちらサンは気づいてないようだな。」 「じゃあ、『作戦X』は三日後決行・・・ってことね?」 「フフフ・・・ちょろいもんさ。」 米倉は、不意に天井を見上げた。 「どうやら、盗聴されているようです。」 「どういう事だね。さっきは大丈夫と言っておきながら・・・。」 米倉は男に小声でささやいた。」 「ご心配なく。実は『作戦X』は三日後ではありません。」 「なに?私は上層部から確かに三日後と聞かされているがね.」 「実はそれはスパイを撹乱する為の虚言です。どこで水が漏れるかもしれませんからねえ、ははは」 「私まで騙していたとは・・・。で、本当は何時だね?」 「明日決行です。」 二人のスパイは、米倉の突然の発言に狼狽えていた。 「げっ!本当かよ、おい」 「違うわ、これはスパイを撹乱する為の罠よ。あいつのでっちあげに決まってるわ!」 「すると、やはり三日後が・・・。」 「いいえ、きっと二日後よ。なぜ一日空けたのか考えてもみなさい。」 「そうだな。あいつらの言動はどうも軽率すぎる。俺たちに盗聴して下さい、といわんばかりの会話だったな。」 スパイは互いに頷きながらその場を離れた。 ボーイのスパイは呟いた。 「フフフ・・・何日後であろうと、俺たちは毎日の様に盗聴を続けてやる。このホテルで会話してる限りはな。」 暗い夜であった。ホテルの密室であった。 初老の男は立ち上がった。 「さて、そろそろいいだろう。無事、会議は終わった時間だ。君も家に帰って休むといい。」 「自分は今夜はここに泊まりますよ。しかし、スパイ撹乱の為のこの『作戦X』、しょうもない作戦でしたね。ははは」